結城紬のこと (至凡氏きものばなし)

茜色して、暮れなずむ農家の縁先で、はじめて結城紬に出会ったとき、思わず胸が熱くなり涙がこぼれました。

結城紬の世界―。

それは、農民にしか創造出来ない情感の世界。
それは、芸術家でもない、職人でもない。
どんなにたくみに糸を紡ぎ、機を織っても 農民は農民でしかないのです。
糸の身になって機を織るのです。
太古の技法を今日も変えられないでいるのです―。

結城紬は、着るほどに丈夫になり、しかも三代の使用に耐える、三代とは五十年三代であるから百五十年もつと
いうことになります。その上、軽くて温かいのです。